Vol. 35 [2011年9月発行]

「客観社会」から、「主観社会」へ。
個人主義の時代の被選択基準とは

クチコミ。人から人へ、口伝と呼ばれる原始的なコミュニケーション手段。幾千ものメディアがあふれるこの時代に、これほどクチコミがもてはやされるとは、何とも皮肉なものです。昔は新聞やテレビのニュースこそが正しい情報であり、クチコミの類は流言飛語として、とても信用に足るソースではなかったのに、今や新聞やテレビは偏向と捏造に満ちており、クチコミこそが本当に信頼できる情報―――という話もあるほどです。真偽のほどはさておき、現代の情報に対するスタンスはそういった方向に流れていることは間違いありません。

 広告効果のあるところには、広告メディアが現れるものです。恣意的なものが介在できないはずの「クチコミ」にさえ、メディアという魔の手が伸びてきました。「ステルス・マーケティング」と呼ばれる手法です。

 ステルス・マーケティングは、ステルス戦闘機のように身を隠すことからその名が付いた手法で、「受け手に広告と思わせないように情報を届ける方法」を指します。まるでスパイ映画に出てくるような格好良いネーミングですが、具体的にはどんなことをするのかというと、何のことはない「サクラ」です。対面でのコミュニケーションが主流だった昭和初期ならまだ可愛げがありますが、現代の「サクラ」はWebを駆使するのでいささか厄介です。いわゆる「クチコミサイト」、「質問掲示板」、「匿名掲示板」、「SNS」・・・人々が「広告でない、本当の情報を知りたい」と思って訪れる場所に、ステルスの罠が張られていることが往々にしてあります。

 さて、これらを踏まえて私がここでお話ししたいのは、陰謀論でも告発でもなく、「これから、消費者の選択基準は<客観的情報>から<主観的情報>へシフトしていくであろう」ということです。客観的であるということは、これまでは「自分の偏見や先入観が入っていない、信頼できる情報」という意味だったのが、単に「自分以外の誰かによる主観的情報」のことを指すようになるでしょう。つまり、純粋な意味での<客観的>という言葉は、消滅するに違いないと考えています。

 偏見も、先入観も、それらもすべて自分の選択基準である、と開き直ってしまえば、<自分の主観で選ぶ>・・・これは実は、最強の選択方法です(なぜなら、最も後悔が少ないからです)。そういった「主観社会」が到来したとき、企業が採るべきスタンスはどのようなものだと思いますか?

 消費者の主観を勝ち得ることは、つまり良い先入観を植え付け、ひいきを得ることです。そのためには、情報の「方向」ではなく、「密度」でもなく、「質」の問題になるでしょう。そして最も良質な情報は、送り手本人にしか送れないでしょう。結局この点からも、私たちが提唱する“真摯な広告”こそが唯一の正解だと考えられます。

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